オーケストラの必需品
著:増澤 幸和
〜オーボエ(モダン)〜
これまでの人生を振り返って、私にとって最も大きな影響を与えたものはオーボエです。
オーケストラにとってオーボエは必需品といわれ入団したものの、ソロなどが多く目立つ楽器だったのです。私の出来不出来がそのままオーケストラの出来栄えになるといっても過言でなく、これはまずいと思いました。
チターの右側は、オーボエ属で、左側より順に
イングリッシュホルン(仏名:コールアングレ)、
モダン・オーボエ、ウィンナオーボエ、バロックオーボエです。
やっとの思いで、ドイツから帰国したばかりの年下の師匠S氏を訪ね弟子入りしました。これでめきめき上達すると思いきや、
(師匠S氏)
「5年かかって、ついた悪い癖は、10年かけないと直らない。
基礎からやり直すので、しばらくオーケストラに行くのは止めなさい!」
(私)
「あー、それでは人生は終わってしまう。それに今いるオーケストラは、私が抜けたらオーボエが不在になり、オケが成り立たなくなる。」
(師匠S氏)
「私が行って吹いてあげます。」
(私)
「それでは出番がなくなる。」
というわけで、本番の曲をさらいながら、基礎練習をするハードな状態が続きました。
その後、芸大のO先生の指導も受けることができ、やがて高校の生徒の指導を頼まれるまでになりました。女生徒ばかりだったので、周りからは、何をしに行くの?とよく言われました。
演奏会に毎回、観客として付き合わせられた妻からは、「いつ間違うかハラハラ、ドキドキ、心臓に悪い。」と言われました。
終わってから「どうだった?」
(妻)
「何あれ!」
「……」
「今日は安心して聴いていられた。」
その返事に一喜一憂。
そんな暇さえあればオーボエと遊んでいる私をみて妻は、
「オーボエと私とどっちが大事?どうせ、私は二の次…。」
「もちろん、君が一番。」
そんな演奏の一コマと20年在籍したオーケストラから退団した時メンバーがお別れ会をやってくれた時のものです。
- 増澤 幸和
- 新コレガリベラ合奏団 主催
- オーボエ、リコーダー奏者
新コレガリベラ合奏団
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